治験に参加することでこうむるリスクとは?
高額が支払われることで知られる治験参加で、リスクと言われて思い浮かぶのは「副作用」というフレーズではないでしょうか。未知の、未承認のくすり候補を使うわけですから副作用=健康へのリスクがあるかも、という不安を覚えるのも無理はありません。
そもそもくすりとは、良くも悪くも体に影響を及ぼすもの。どんなくすりでも「確実に安全」とは言えません。そのため、国(厚生労働省)が定めた厳格な基準にパスした(承認を受けた)ものでないと処方や販売はできないことになっています。
この、国の承認を受けるために、実際に健康な人や患者さんに協力してもらい、くすりの効果や安全性を確かめる最終・最難関の試験が「治験(人によって行う臨床試験)」です。
治験を行う製薬会社、病院、医師は、何度も審査を重ね、人に使用しても安全と予測された「くすりの候補」だけを使って試験をします。また、治験モニター(参加者)の意思の尊重と安心安全を第一に、厳しい審査のもとに選ばれた病院や医療機関で実施しています。
さらに、治験を行う際は「治験実施計画書」が、患者さんへの人権・福祉を守って、くすりの候補の効果を科学的に調べられる計画になっているかどうか、治験審査委員会(IRB)を設置して審議を受け、その指示に従わなければなりません。
治験は決して危険な薬を投与されたり、危ない実験をされるようなものではありません。あくまでも新薬の効果や副作用について、最終的なデータを取るために行われるものです。
とはいえ、副作用が全くないとは言い切れません。眠気や下痢、便秘、胃の不快感など、副作用の症状はさまざまですが、「重大な副作用は国に報告すること」という取り決めがあり、治験中に発生した、これまでに知られていなかった重大な副作用は、治験を依頼した製薬会社から国に報告されます。
また治験の途中に、他の患者さんで見られた副作用などについて説明され、治験モニターの安全を確保するため、必要に応じて治験計画の見直しなどが行われます。患者さんの治験への継続参加の意思も確認されます。
どうしても、副作用がコワイという場合は、途中で辞退することも自由です。この場合、それまでに協力した分の謝礼金が支払われるケースもあれば、支払われないこともあるため、心配な方は事前に確認しておくといいでしょう。
プラセボによるリスク?
治験には3段階の試験があり、それぞれ第1相臨床試験(フェーズ1)、第2相臨床試験(フェーズ2)、第3相臨床試験(フェーズ3)とよばれています。
少人数の健常者を対象として、治験薬の安全性や、どのようにして体内に吸収され排出されるかを血液や尿などで調べる第1相臨床試験。
少人数の適応疾患患者を対象にして有効性・安全性・使用方法を調べる第2相臨床試験。ここでは、プラセボ(※)を加えて実施するのが一般的です。
第3相臨床試験では、多数の患者を対象に、用法・用量・有効性・安全性など第2相よりもさらに詳細なデータや結果を収集します。第3相臨床試験が最終確認になります。ここでは主に、治験薬・標準的なくすり(対照薬)・プラセボの3グループで実施します。
治験の第2相臨床試験、第3相臨床試験における不安と言えば、治験モニターは、くすり候補かプラセボかを選べないことです。
新しい薬を試したいと思って参加していてもプラセボチームに配属される可能性があります。もちろん、モニターにはどちらを使っているかは知らされません。
その場合、プラセボのチームに配属されれば参加した患者さんの症状が悪化するのではないかという心配があります。これが二つ目のリスクです。
効き目のないものを服用して症状が悪化したら?と不安に思われるかも知れませんが、専門医や治験に関わる人が慎重に患者さんの様子を確認しており、変化が見られたら直ぐに適切な処置をする体制ができています。
プラセボとは
有効成分を含まない(治療効果のない)偽薬のことです。患者によっては、有効成分が入っていなくても「くすりを飲んだ」と思うだけで心理的作用が働き、効果を表すことがあります。これを「プラセボ効果」と言います。
治験では、病気の改善がくすり候補の効果なのか心理的なものかを科学的に実証するためにプラセボを服用してもらうことがあります。
治験説明会でなっとくがいくまで話を聞く
医療施設における説明会では、「治験の説明書」を文書で詳細に説明します。治験モニターはここで不安な点、不明な部分をなっとくがいくまで質問・相談し、その後同意書に署名をします。この「説明と同意」のことをインフォームド・コンセントといいます。
治験への参加は自由な意思によるもので、強制ではありません。また同意した後であっても体調や心理的な不安が残るときは参加を撤回することができます。
新しい薬を誕生させるために行われる「治験」についての説明は公的機関の情報もご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu.html