2023年8月26日

認知症と治験モニター。その治験の内容例などについて

治験コンシェル

認知症と治験モニター。その治験の内容例などについて

認知症は誰もがなり得る病

人は、歳を取ると認知症になりやすくなります。高齢社会が進む日本では、現在65歳以上の4人に1人が認知症またはMCI(正常と認知症の中間の状態…軽度認知障害)と言われています。 認知症とは、正常に働いていた脳の機能が低下し、記憶や思考への影響がみられる病気です。そして、認知症は、特別なことではなく誰にでも起こる身近な病気です。

認知症はどんな病気?

正常であった記憶や思考などの能力が、脳の病気や障害のために低下していく病です。 認知症にはいくつかの種類があり、いちばん多いのがアルツハイマー型認知症。男性より女性に多く見られ、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症です。 次に多いのが脳梗塞や脳出血などの脳血管障害による血管性認知症で、比較的男性に多くみられます。全体的な記憶障害ではなく、一部の記憶は保たれている「まだら認知症」が特徴です。症状は段階的にですが、アルツハイマー型よりも早く進むことがあります。 かつての日本は、血管性認知症が多かったのですが、現在では減ってきており(医療や外科手術の進歩に伴って)、最近ではアルツハイマー型と血管性認知症が合併した患者さんも多く見られます。 注意したいのは、高齢者だけでなく、若くても脳血管障害や若年性アルツハイマー病によって認知症を発症することです。65歳未満で発症した認知症を若年性認知症といいます。

軽度で早期発見し早期治療を

最近注視されているのが、認知症とまでは行かないけれど、正常な「もの忘れ」よりも記憶や思考力があきらかに低下している「軽度認知障害」です。 軽度認知障害のすべてが認知症になるわけではありませんが、この段階から治療を開始することで、認知症の進行を遅らせるなどの効果が期待されています。 もの忘れの程度が、同年代の他の人と比べて強いなと感じたら、専門病院を受診するのもいいでしょう。がんと同じで、早期に発見し、早期治療をすることが大切です。

普通のもの忘れと危険なもの忘れ

もの忘れには、正常なものと認知症が疑われるもの忘れがあります。 認知症かも?と心配な人は、次のような項目を目安にしてみてください。

正常な「もの忘れ」

もの忘れの範囲:出来事などの一部を忘れる。タレントの名前が出てこない。昨夜、何を食べたか思い出せない。 自覚:もの忘れに気づき、思い出そうとする。 学習能力:新しいことを覚えることができる。 日常生活:日常生活に支障がない。 幻想・妄想:ない。 人格:人格に変化がない。

認知症によるもの忘れ

もの忘れの範囲:仕事の約束や出来事など、すべてを忘れる。食べたことそのものを忘れる。毎日通っている道で迷う。 自覚:もの忘れに気づかない。 学習能力:新しいことを覚えられない。 日常生活:日常生活に支障をきたす。 幻想・妄想:起こることがある。お金を盗られた、中傷されている…など。 人格:変化する(怒りやすい、暴言を吐く暴力を振るう、何事にも無関心になるなど)。 <朝田隆著:「家族が認知症と診断されたら読む本」日東書院p.33より改変>

認知症の治療

根治療法はまだありません

認知症を完全に治す薬や治療法は、今はありません。そのため、できるだけ症状を軽くする、または進行の速度を遅らせることが現在の治療目的とされています。治療法には薬物療法と非薬物療法があります。

薬物療法

アルツハイマー病では、抗コリンエステラーゼ阻害薬に症状の一時的な改善効果が認められています。ただ、この効果は一時的で、進行を完全に抑えることはできません。進行を遅らせるだけですから、できるだけ早期より治療を開始して、少しでも軽症の段階にとどめることが大切です。そのためにも早期発見が重要視されています。 なお、脳血管性認知症に効果がある薬剤は、今のところ存在しません。

非薬物療法

不安・焦り・睡眠障害・徘徊・家族への依存・暴力・せん妄などの「周辺症状」は、介護者への強いストレスや負担になることが多く、薬物を使って症状を抑えたくなるものですが、周辺症状に使われてきた薬の中には、認知症の症状をかえって悪化させるものがあるため、薬物療法には慎重を要します。 まずは薬に頼らず、患者さんを刺激しない(患者さんの虚言を否定したり、叱ったりしないで耳を傾ける態度をとるなど)、規則正しい生活をおくるようにする、環境を急激に変えないようにする、などを基本とします。 また、認知能力を高めるためのリアリティ・オリエンテーション(常に問いかけを行い、場所・時間・状況・人物などの見当識を高める)、簡単な楽器演奏や運動などで刺激を与える、過去を回想するなどの療法を行う場合もあります。 とはいえ、症状が進み、周辺症状が激しくなってくれば、介護者の疲労や負担、不安を考えて薬物療法を試すこともあります。

認知症の治験

アルツハイマー認知症は、脳内にアミロイドβという物質が蓄積して、それが神経細胞の変性に関係すると考えられています。そのため、アミロイドβを蓄積させない治療法を開発しようと、世界中の研究者がしのぎを削っているところです。

治験に参加できるのはこんな人

認知症の治験には以下のような項目に当てはまる人がモニター登録できます。 *認知症の臨床試験や治験に参加協力することを検討してもよい *本人またはご家族の「もの忘れ」がここ最近多くなってきたように思う *本人またはご家族が「軽度の認知障害」または「認知症」と診断された

治験の内容例

通常の治験とは違って、薬物治験だけでなく、さまざまなアプローチがなされているのが特徴です。

認知症高リスク高齢者に対する進展予防を目指した多因子介入によるランダム化比較研究:某市立大学

認知症のリスクをもつ高齢者を対象として、生活習慣病の管理、運動、栄養、認知トレーニングの複合介入を行う多因子介入(オープンラベルランダム化比較試験)により、認知機能障害の進行が抑制されるか検証を行う

ハンドマッサージよる認知症高齢者の焦燥性興奮への効果:某看護大学

焦燥性興奮のある認知症高齢者に対するハンドマッサージの一定期間の効果を検証する

アミロイドPET-MRI研究 健常者ボランティアにおいて:某大学院医学研究科

PET/CTでアミロイドPET撮影が行われた研究対象者に対して、PET/MRにてアミロイドPET撮影を追加で行いPET/CT画像と対比、同時に撮影したMR画像とも対比を行う。 自分は軽度認知障害では?と心配な方や家族に軽度認知障害のサインが見られる時は、認知症治験の登録をしておいてはいかがでしょうか。 参考:厚生労働省「知ることからはじめよう」みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/

執筆者

治験コンシェル
治験バンクコラムの企画・執筆・編集をしています。マーケティング、SEO対策、デザインに強みを持ったメンバーが、最新情報やノウハウをわかりやすくお届けします。