2023年8月23日

がんと治験ボランティアのモニターについて

治験コンシェル

がんと治験ボランティアのモニターについて

がんの治験とは

治験とは、厚生労働省から承認を得ることを目的に、治療効果のあるくすり候補を用いて人で行う臨床試験のことです。 がんの治験はその他の疾患での治験とは少し様相が異なります。 治験には3段階あって、第1相、第2相、第3相試験と呼び、安全性と有効性を確認しながら進めていくものです。そのため、通常第1相試験ではボランティアの健康な成人を対象に実施します。ところががんの治験では、最初から、有効な治療または※標準的治療がないがんの患者さんが対象になります。 なぜなら、抗がん剤は他の薬に比べて毒性が強く、がん細胞だけではなく健康な細胞にも影響する恐れがあるためです 治験には、製薬会社が行う「企業治験」と医師が研究者として主体的に行う「医師主導治験」があります。患者数の少ない希少がんなどの新薬や適応外薬の開発では、医師主導治験が行われることが多くなっており、これも通常の治験とは少し違うところです。 ※標準的治療とは科学的根拠に基づいた観点で、現在利用・推奨されている最良の治療のこと。

がんの治験のすすめ方

第1相試験(フェーズ1)の主な目的は安全性の評価です。毒性の種類と程度を正確に評価して、容量制限毒性を見極め、最大耐量や推奨用量を決定します。 第2相試験(フェーズ2)では、第1相試験で決定されたことの実施の可能性を評価するとともに、抗腫瘍効果としての奏功割合を評価して第3相試験に進むかどうかを決めます。 第3相試験(フェーズ3)は、新薬や新治療を現在の標準治療と比較して、新しいくすりや治療に有効性がある、または副作用が少ないなどのメリットを証明します。 がん治験における第1相試験では、投与される物質がくすりになるのか毒性が強いためにそこで消えるものか、全く分かりません。米国のデータでも第1相試験が実施されたがんのくすり候補のうち、米国食品医薬品局(FDA)が承認したのはわずか5%となっています。また、第3相試験までたどりついても、くすりの有効性や安全性が証明されなければ開発が中止されることも少なくありません。 第3相試験によって生存期間の延長が認められたり、既存のくすりより副作用が少ないなどの効果や安全性が証明されれば、くすりとして治療に使ったり販売したりすることが承認されます。 新薬が一つ完成するまでに、一般的には5〜10年以上かかります。ただし、患者数が少なく命に関わる希少がんを対象にしたくすり候補や医療技術の治験の場合は、第2相試験の結果を見て承認されるケースもあります。その後あらためて第3相試験が実施されることもあります。

治験のメリットとデメリット

臨床試験に参加するメリットは、“新しいくすりや治療法を試すことで、効果が得られるかもしれない”ということでしょう。新薬の治験には、標準的治療で効果が出る可能性がなくなった患者さんが、わずかな望みをかけて参加することもよくあります。ほかにも、治療の選択肢が増える、普段できない詳細な検査や診療の機会が増える、専門医に診療してもらえて安心できる、という声が上がっています。 一方、デメリットには、予測していなかった副作用が起こる危険性があったり、検査や診察のために通常よりも頻繁に通院しなければならないわずらわしさがあったりします。また、これは治験の基本として理解しておくべきことですが、くすりの候補とプラセボ(偽薬)や標準治療を比較するような治験では、くすりの候補を試してみたくても、自分で選ぶことはできません。 治験に参加する前に、メリットやデメリットを考え、治験説明会に参加してインフォームドコンセントを受け、しっかり考えてから決定することが大切です。 新しい薬を誕生させるために行われる「治験」についての説明は公的機関の情報もご確認ください。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu.html

執筆者

治験コンシェル
治験バンクコラムの企画・執筆・編集をしています。マーケティング、SEO対策、デザインに強みを持ったメンバーが、最新情報やノウハウをわかりやすくお届けします。