2023年8月14日

インフルエンザとワクチンの話

治験コンシェル

インフルエンザとワクチンの話

インフルエンザと普通の風邪、違いは?

風邪は、さまざまなウイルスによって起こります。普通の風邪の多くは、のどの痛み、鼻づまり、鼻汁、くしゃみ、咳などが主な症状で、全身に及ぶような症状はあまり見られません。熱もインフルエンザほど高くはなく、重症化することはまれです。 一方インフルエンザは、「インフルエンザウイルス」に感染することでおこります。38℃以上の高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身の倦怠感などが急速に現れるのが特徴で、合わせて、普通の風邪の症状(のどの痛み、鼻づまり、咳など)も見られます。 子どもがかかると、まれにですが急性脳症を、高齢者や免疫力の低下した人は二次性肺炎(細菌性の肺炎)を併発するなど、重症化することがあります。 このような、一定の時期に起こるインフルエンザを季節性インフルエンザと言い、流行性があるのが特徴です。いったん流行が始まると、短期間で多くの人に感染が広がります。日本での流行時期は例年12月〜3月です。

季節性インフルエンザと新型インフルエンザとの違い

季節性インフルエンザ

インフルエンザウイルスは、鼻腔(びくう)、咽頭(いんとう)、喉頭(こうとう)、気管支などを標的として、急性炎症の症状を引き起こします。潜伏期間が短く、感染2日後にはウイルスが増殖し、すぐに発症を自覚できるため、感染防止対策が取りやすいといえます。 人に流行的に広がるのはA型とB型です。 A型のインフルエンザは、原因となるインフルエンザウイルスの“抗原性(病気を引き起こす物質)”がわずかに変化しながら、毎年世界中の人の間で流行しています。

新型インフルエンザ

新型インフルエンザは、インフルエンザウイルスの“抗原性”が突然大きく変異したもので、多くの国民が免疫を持っていないため、急速に全国的に蔓延してしまうものです。 新型インフルエンザがいつどこで発生するのか、予測は困難です。しかも、ひとたび発生すれば国民の健康や生命、医療体制、国民生活、経済全体に大きな影響を与えます。 これまで世界的に大流行(パンデミック)した新型インフルエンザには1918年の「スペインインフルエンザ」、1957年「アジアインフルエンザ」、1968年「香港インフルエンザ」、2009年のパンデミック「インフルエンザA(HINI)」があります。

インフルエンザワクチンの開発

ワクチンが開発されるまで

インフルエンザは、はるか昔から人類を苦しめてきた病気です。世界で最初の記録は紀元前412年。古代ギリシャの医師ヒポクラテスがインフルエンザ様疾患について記載したものが残っています。 インフルエンザ様疾患の大流行については西暦1580年が最初と見られています。もちろんこの頃は、ワクチンも治療薬もありません。 全世界で4千万人が死亡した、人類史上最悪の流行と言われる1919年のスペイン風邪をきっかけに、世界中の研究者が病気の原因解明に取り組み、インフルエンザ菌(後にウイルスと訂正)を特定しました。 その後、インフルエンザの予防にはワクチンが効果的だとわかり、多くの研究者が開発に取り組んだ結果、「インフルエンザウイルス」の分離に成功。まず生ワクチンが開発され、その性質や有効性などを踏まえたうえで不活化ワクチンの開発へと移っていきました。

ワクチンは3種類

ワクチンは、感染の原因となるウイルスや細菌をもとにして作られます。 製造方法や成分の違いから、「生ワクチン」「不活化ワクチン」「トキソイド」の3種類に分けられます。

生ワクチン

病原体となるウイルスや細菌の生存能力はそのままに、毒性を弱めて病原性をなくしたものを原材料にします。弱毒ワクチンともいい、軽く感染した状態になります。 毒性を弱められたウイルスや細菌が体内で増殖して免疫を高めていくので、接種の回数は少なくてすみますが、十分な免疫ができるまでに約1カ月が必要です。そのため、4週間は、次のワクチンを打てません。

不活化ワクチン

病原体となるウイルスや細菌の、感染する能力を失わせた(不活化、殺菌)ものを原材料として作られます。 自然感染や生ワクチンと違って体の中で増えないため、免疫力が弱く、複数回の接種が必要なこともあります。 インフルエンザワクチンは主に不活化ワクチンです。

トキソイド

感染症によっては、細菌やウイルスが出す毒素が免疫を作るのに役立つものもあります。病原体から「毒素だけ」を取り出し、その毒を無害化したものがトキソイドです。不活化ワクチンの一種です。 不活化ワクチン同様、免疫力がつきにくいので複数回の接種が必要です。 主に「破傷風」「ジフテリア」などはこの種類です。

ワクチンは毎年受けるもの?

インフルエンザの流行は毎年起こります。しかもどの型のインフルエンザが流行するかは分かりません。 インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行するであろうと推測されたウイルスを使って製造されています。そのため、前年にインフルエンザワクチンの接種を受けていても、「今年のインフルエンザワクチン」を接種したほうが良いと考えられます。 ただ、インフルエンザワクチンを接種すれば、インフルエンザにかからないということではないため、手洗いやうがいをきちんとして、食事や生活習慣に気を配ることが大切になります。 参考「地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 理事長奥野良信氏論文<インフルエンザワクチン開発の歴史> / 厚生労働省ホームページ」 新しい薬を誕生させるために行われる「治験」についての説明は公的機関の情報もご確認ください。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu.html

執筆者

治験コンシェル
治験バンクコラムの企画・執筆・編集をしています。マーケティング、SEO対策、デザインに強みを持ったメンバーが、最新情報やノウハウをわかりやすくお届けします。