摂食障害とは？

摂食障害とは、食事や体重に対する異常な考え方や行動が原因で、心身に深刻な影響を及ぼしてしまう病気です。
摂食障害は、体重や体型に対する過度な関心から始まることが多く、ストレスや社会的なプレッシャー、心理的な問題が複雑に絡み合っています。
摂食障害は適切な治療を受けることで回復が可能ですが、早期の認識と対応が鍵となります。

摂食障害の背景にあるものは？

摂食障害の原因は一つではなく、複数の要因が重なり合って発症します。
以下のような要因が考えられます。

生物学的要因

遺伝や脳の化学的バランスが影響することがあります。
家族に摂食障害を経験した人がいる場合、そのリスクは高まる可能性があります。
また、ホルモンの変動や脳内の神経伝達物質の不均衡なども関連しています。

心理的要因

自己評価が低い、完璧主義、過剰なプレッシャーなど、個人の性格や心理状態が摂食障害に寄与することがあります。
過去のトラウマや虐待、ストレスも心理的要因となることもあります。

社会的要因

現代社会では、メディアやSNSを通じて「痩せていること」が理想的な美しさとして描かれがちです。
このような社会的プレッシャーが、摂食障害の発症に影響を与えることがあります。
友人や家族、職場の環境もまた重要な要素となります。

こんなサインがあったら注意してみて

摂食障害の初期症状は見過ごされがちですが、早期発見は重要です。
以下のような兆候が見られた場合は、注意が必要です。

・ 急激な体重の変化 ： 急に体重が減少したり、増加したりする。
・ 食事に対する異常なこだわり ： 特定の食べ物を避ける、食事の量やカロリーを過度に制限する。
・ 体型や体重への強い不安 ： 自分の体型や体重について過剰に心配する。
・ 社会的な孤立 ： 友人や家族との食事を避ける、外出を控える。
・ 運動の強迫的な行動 ： 運動を過剰に行い、休息を取らない。

これらのサインを見逃さないことが、摂食障害の早期発見と対策に繋がります。

主な摂食障害のタイプ

摂食障害にはいくつかのタイプがあります。以下に代表的なものを紹介します。

拒食症（神経性無食欲症）

拒食症は、体重増加への強い恐怖心から、極端な食事制限を行う摂食障害です。
自分の体重や体型について歪んだ認識を持ち、やせているにもかかわらず太っていると感じます。
この結果、健康に重大なリスクを及ぼす可能性があります。

拒食症の患者は、食事を極端に制限することで、低血圧、低体温、無月経、心拍数の低下などの身体的症状を引き起こすことがあります。
また、長期間の栄養不足は、身体全体の機能に深刻な影響を与えるため、専門家による早期の介入が重要です。

過食症（神経性過食症）

過食症は、短時間で大量の食事を摂取した後、体重増加を防ぐために自己誘発性の嘔吐や下剤の使用、過度の運動などを行う行動が特徴です。
過食とその後の代償行為が繰り返され、身体的・精神的に深刻な影響を与えます。

過食症の患者は、食べ物に対する強い衝動を感じ、短時間で大量に食べてしまうエピソードを繰り返します。
その後、自己嫌悪や罪悪感に襲われ、代償行為に走ることが一般的です。
このようなサイクルが繰り返されることで、心身ともに負担が増大してします。

過食性障害

過食性障害は、短期間に大量の食事を摂取するエピソードを繰り返すことが特徴ですが、過食症とは異なり、嘔吐や過度の運動といった代償行為は伴いません。
このため、過食性障害は肥満や心血管疾患のリスクを高めることがあります。

過食性障害の患者は、食べ物への欲求を制御できず、摂食後に強い後悔や自己嫌悪を感じることが多いです。
この障害は心の健康にも影響を及ぼし、鬱や不安障害を引き起こすリスクが伴います。

診断はどのように行われるの？

摂食障害の診断は、医師や専門家による詳細な評価が必要です。
診断プロセスには以下のようなステップが含まれます。

①問診 ： 患者の食事習慣や体重変化、精神的な健康状態を詳細に聞き取ります。
②身体検査 ： 体重や身長、血液検査などを通じて、身体的な健康状態を評価します。
③心理評価 ： 心理カウンセラーや精神科医による心理テストや面接を行い、心の状態を詳しく分析します。

専門家による診断を受けることで、適切な治療計画が立てられます。

一緒に考える治療法

摂食障害の治療は、個々の状況に応じたアプローチが重要です。以下に主な治療法を紹介します。

心のケア（カウンセリングなど）

心理療法は、摂食障害の治療において中心的な役割を果たします。
認知行動療法（CBT）は、摂食障害の症状を改善するのに効果的とされています。
患者が自分の思考や行動を理解し、健康的な習慣を取り入れる手助けをします。

CBTは、食事に関する否定的な思考パターンを特定し、それを健康的な考え方に置き換えるための具体的な方法を提供します。
また、マインドフルネス療法や家族療法も、摂食障害の治療に有効なアプローチとして知られています。

お薬によるサポート

抗うつ薬や抗不安薬などの薬物療法は、摂食障害に関連する精神的な症状を和らげるのに役立つことがあります。
ただし、薬物療法は心理療法と組み合わせて行われることが一般的です。

薬物療法は、患者の不安やうつ状態を緩和し、治療に対する意欲を高める効果があります。
処方薬の選択は、患者の症状や健康状態に基づいて行われ、専門医の指導のもとで使用されます。

食事指導でのサポート

栄養士による食事指導は、健康的な食習慣の確立をサポートします。
個々のニーズに合わせた食事プランを提供し、栄養のバランスを整える手助けを行います。

栄養士は、患者が必要なカロリーや栄養素を摂取できるよう、現実的で実行可能な食事計画を作成します。
また、食事に対する恐怖心や誤った認識を改善するための教育も行い、食事を通じて心と体の健康を回復させます。

健康を守るために知っておきたいこと

摂食障害は放置すると健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
以下のようなリスクと合併症を知っておくことが重要です。

・ 身体的リスク ： 栄養不良、電解質異常、心血管疾患、骨粗しょう症など。
・ 精神的リスク ： うつ病、不安障害、自尊心の低下など。
・ 社会的影響 ： 学校や仕事でのパフォーマンス低下、人間関係の悪化。

摂食障害の影響を最小限に抑えるためには、早期の対応と治療が重要です。

摂食障害のリスクを軽減するためには、定期的な健康診断や専門家による評価が有効です。
また、心身のバランスを保つために、ストレス管理や適度な運動、良質な睡眠を心掛けることが推奨されます。

予防と早めの対応が鍵です

摂食障害を予防するためには、社会全体での取り組みが必要です。以下のような方法で予防と早期対応が可能です。

教育

学校や家庭で、健康的な食事と体型に関する教育を行う。

メディアリテラシー

メディアやSNSからの影響を正しく理解し、自己評価を高める。

サポートネットワーク

家族や友人、専門家とのコミュニケーションを大切にし、ストレスを抱え込まない環境を作る。

早期に問題を認識し、適切なサポートを受けることが、摂食障害からの回復に繋がります。

教育機関やコミュニティにおける摂食障害に関する意識向上活動も、予防へと大いに役立ちます。
体重や外見に過剰な重きを置かない健全な価値観の普及が、摂食障害の発生を防ぐ重要な要素です。

支え合いながらの回復を目指そう

摂食障害の回復には、周囲の理解とサポートが欠かせません。
家族や友人は、患者が安心して治療に取り組める環境を提供し、共に回復の道を歩むことが重要です。
以下のようなサポートが役立ちます。

感情の共有

患者が感じていることを理解し、受け入れる姿勢を持つ。

治療への参加

患者の治療計画に積極的に参加し、サポートを提供する。

日常生活のサポート

食事や生活習慣を整える手助けを行い、健康的な環境を提供する。

また、摂食障害の回復には時間がかかる場合があります。
家族や友人は、忍耐強く、持続的な支援を続けることが重要です。
患者が安心して治療に取り組むために、愛情と理解をもって接することが求められます。

助けが欲しいときの頼り先

摂食障害に悩んでいるときは、専門家や支援団体の助けを借りることが重要です。
以下は、支援を受けられる場所やオンラインコミュニティの例です。

医療機関

心療内科や精神科、専門のクリニックで相談を行う。

支援団体

全国の摂食障害支援団体が、情報提供や相談窓口を開設しています。

オンラインリソース

インターネット上には、摂食障害に関する情報やサポートグループがあります。

多くの支援団体が、摂食障害に関する情報提供やカウンセリングサービスを提供しています。
地域の保健所や福祉センターでも、摂食障害について相談できる窓口が用意されていることがありますので、安心して利用しましょう。

まとめ

摂食障害は多くの人に影響を及ぼす深刻な問題ですが、正しい理解と周囲のサポートがあれば回復することが可能です。

重要なのは、早期に問題を認識し、専門家の助けを求めることです。また、家族や友人といったサポートネットワークを築くことで、安心して治療に取り組む環境を整えることができます。

社会全体で摂食障害についての意識を高め、支え合いながら健全な生活を築いていくことが大切です。
健康的な食習慣や心のケアを心掛け、自分自身を大切にすることを忘れずに、回復への道を歩んでいきましょう。

このコラムが、摂食障害に悩む方やその周囲の方々にとって、有益な情報となり、安心と希望をもたらす一助となれば幸いです。

新しい薬を誕生させるために行われる「治験」についての説明は公的機関の情報もご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu.html