2024年6月20日

乗り物酔いについて

治験コンシェル

乗り物酔いについて

なぜ乗り物酔いするのか

乗り物酔いは、車やバス、電車、船などの乗り物の揺れ、不規則な加速・減速の反復を受ける内耳からの情報と目からの情報、体からの情報を受けた脳が混乱することによって起こる自律神経系の病的反応です。
また、嗅覚からの不快感やストレス・不安などの精神的因子も乗り物酔いに関与していると言われています。
乗り物によって、車酔い、船酔い、空酔いとも言われ、遊園地やテーマパークのアトラクションなどでも乗り物酔いを引き起こすことが知られています。

乗り物酔いと耳との関係

耳で関係するのは内耳にある三半規管と耳石器で、体のバランスを保つ平衡感覚をつかさどる重要な役割を果たしています。
・三半規管(さんはんきかん)
耳の奥の内耳にある器官で、回転運動を感知する。
体の動きに伴い三半規管内にあるリンパ液が動くと、刺激となって情報が脳に伝達される。

・耳石器(じせきき)
内耳の三半規管と蝸牛の間にある器官で、移動や傾きを感知する。
移動に伴い中にある砂のような耳石が動くと、その刺激が情報となって脳に伝達される。

・前庭小脳(ぜんていしょうのう)
小脳の一部で、体のバランス感覚をコントロールする器官。
三半規管や耳石器、目、筋肉など体の各器官が感じた刺激を調節して、大脳に伝達している。
三半規管と耳石器でとらえられた体の位置・揺れやスピードなどの情報は脳へと伝えられます。
しかし、乗り物による不規則な加速・減速、発車や停車の繰り返し、右折・左折や曲がりくねった道などによる前後左右上下への揺れなどが過度に生じると、脳への情報量が過剰になったり、耳がとらえた情報と実際に目から入る情報とにズレが生じたりすることになります。
すると、脳が情報を正常に処理しきれなくなり、心臓や血管などの循環器や胃や腸などの消化器をコントロールしている自律神経の働きが乱れることで、冷や汗や胃の不快感を始め、さまざまな乗り物酔いの症状を招いてしまいます。
自律神経の乱れは嘔吐中枢を刺激し、吐き気や嘔吐といった症状ももたらします。

乗り物の加速や振動のほかに、精神的な不安が乗り物酔いを助長したり、誘発したりすることもあります。
いつも乗り物酔いに悩まされている人は、過去の乗り物酔いの記憶がプレッシャーやストレスとなって、乗り物酔いを引き起こす原因となっていることも少なくはありません。

乗物酔いしやすい人

乗物酔いしやすい人の特徴

年齢とともに乗り物に乗る経験を重ねることで、通常は脳が乗り物のスピードや揺れに慣れ、乗り物酔いを起こさなくなっていきます。
しかしながら、乗り物に乗り慣れていない人は、大人になっても乗り物酔いしやすいままです。
乗り物への不安が強い人や、精神的なストレスを抱えている人も乗り物酔いしやすい人といえます。

①アレルギーがある人
アレルギー症状は、その原因となるアレルゲンが体内に入りヒスタミンが放出されることで起こります。
アレルギーに深く関与するヒスタミンは脳の嘔吐中枢を刺激するため、ヒスタミンを放出しやすいアレルギー体質の人は乗り物に酔う可能性が高くなります。

②低血圧の人
血圧をコントロールする自律神経の調整能力が弱く血液循環のバランスが保てないと、低血圧になります。
低血圧になると脳や消火器への血液のめぐりも不足しがちになり、乗り物酔いを起こしやすくなってしまいます。

③便秘や下痢を起こしやすい人
腸の働きも自律神経によってコントロールされています。
その一方で、腸内環境がよくなると自律神経も整うなど、相互に影響しあう関係です。腸の調子を崩しがちな人は自律神経も乱れやすく、乗り物酔いをしやすい体質といえます。

一般的に男性よりも女性のほうが乗り物酔いに悩む人は多いとされていますが、女性は②や③に当てはまる人が男性よりも多いからと考えられます。①~③に当てはまり、乗り物酔いもひどい場合は、医師に相談しながら体質改善に取り組むとよいでしょう。

乗り物に酔いやすい年齢

0~3歳くらいまでの乳幼児は前庭小脳が未発達の状態にあるため、乗り物酔いすることはほとんどありません。
その後、前庭小脳が発達し始める4~12歳くらいまでの間は、外部からの刺激に敏感に反応し、乗り物酔いを起こしやすくなります。
体調不良や体質、不安やストレスなども影響し、酔う子どもと酔わない子どもに分かれます。
小学校高学年から中学生で多く見られるようになり、20歳前後になると前庭小脳の老化が始まるとされ、それ以降刺激への反応が鈍くなっていきますが、成人でも乗り物酔いに悩む人は少なくありません。

乗り物酔いしやすい子供

三半規管や脳の働きが未発達な2歳頃までの乳幼児では、乗り物酔いを生じないといわれていますが、次第に酔いやすい子供と酔わない子供の差が出てきます。
脳の情報処理能力を始め、子供ひとりひとりが持つ体質が影響します。
また、起立性調節障害の子供は乗り物酔いしやすいといわれています。

また、乗り物酔いをする頻度や症状の重さが突然変わったら耳や脳の病気の可能性があります。
「大人になってから酔い始めた」「50歳過ぎて症状がひどくなった」「急に酔わなくなった」などという方は医療機関で検査を受けるようにしましょう。

乗り物酔いを防ぐために

乗り物酔いを防ぐためには、出発前と移動中の対策が大切です。

出発前に

十分な睡眠をとる
睡眠不足や疲労があると自律神経が乱れやすく、乗り物で出かける前日は十分な睡眠をとり、よく休むようにしましょう。
車内の清掃
車独特の臭いやエアコンのカビ臭さ、タバコの臭いなどは車酔いを誘発するので、ドライブの前にはしっかりと車内を清掃し、消臭剤などで嫌な臭いを消しておきましょう。
空腹・満腹を避ける
空腹や満腹状態は、自律神経の乱れにつながるため、乗車前は食事は消化しやすいもの(脂肪分が少ないものなど)を摂るなどとし、空腹や満腹状態になるのを避けましょう。
体を締めつける服装を避ける
ベルトやネクタイ、きつめの下着など体を締めつける服装は酔いを助長しやすいので、リラックスできるゆったりとした服装を心がけましょう。
「酔わない」と思い込む
「酔うかもしれない」という不安やストレスは自律神経を乱す原因になるので、「酔わない」「大丈夫」と思い込むことで、緊張をとりましょう。
酔い止め薬を服用する
酔ってしまう不安が強い方は、乗り物に乗る30分前に酔い止め薬を服用しましょう。薬を服用したことによる安心感も得られます。

乗車中は

酔いにくい座席に座る
乗り物の揺れが不快な気分の大きな原因となるため、揺れやすい場所を見極めて、なるべく離れた座席を選びましょう。
バスは、振動がダイレクトに伝わるタイヤの上の座席を避けて、前輪と後輪の間ぐらいの席を選択しましょう。
自家用車は、景色が正面に見える前方の席に座ると、視界とからだの揺れのズレを抑えられることができます。
電車は連結部分が揺れるので、各車両の真ん中ぐらいの席にして、後ろ向きの席には座らないようにしましょう。
前後左右の揺れが激しくなることもある船も中央あたりの座席がおすすめです。船中泊するときは、進行方向に枕をおいて寝ると酔いにくいと言われています。
視線や姿勢に気を付ける
視線は、乗り物の動きを予測できるように、アゴを引き気味にし進行方向をまっすぐ見ましょう。
座席に深く腰掛けて、大きなカーブでもあまりからだが動かないようにしておけば、バランスを感じる三半規管の中のリンパ液の動きを抑えて、乗り物酔いのリスクを軽減できます。
読書や携帯用ゲームをしない
下を向いて読書やスマートフォンなどを操作していると酔いやすくなります。
気分が悪くなりそうだと思ったら、早めに背もたれを倒すか横になって頭を上に向けましょう。横になることで頭が固定されると情報がずれにくくなるため、酔いにくくなります。

もし乗り物酔いが起きてしまったら

乗り物に酔ったら、乗り物を降りて外の空気を吸い、気分を落ち着かせましょう。
激しい揺れやスピードから解放されると、脳の混乱も治まり、徐々に症状は和らぎます。
また、吐き気がある場合は我慢せず、吐いたほうが楽になります。嘔吐した場合は、回復を見ながら少しずつスポーツドリンクなどで水分を摂りましょう。
すぐに降りられない場合は、ベルトなど体を締めつけているような衣類を緩め、なるべく頭を動かさないよう楽な姿勢をとらせて安静にしましょう。
窓が開閉可能な乗り物なら、こまめに窓を開けて換気し、新鮮な空気を取り入れましょう。

乗り物酔いを克服するために

①乗り物に慣れる

乗り物酔いの根本的な克服につながる最も効果的な方法は、乗り物の揺れやスピードに「慣れる」ことです。
酔ってしまうからと乗り物を避けるのではなく、酔い止めの薬を使ってでも乗り物に乗って慣れることが、克服につながります。
乗り物酔いは小さな乗り物ほど揺れやすいと言われているので、バスなどの大型の乗り物から始めるとよいでしょう。
まずは、近くの距離からはじめ、だんだんと距離を延ばせるとよいでしょう。
同じルートをたどると、体がその揺れを覚えるので酔いにくくなります。慣れてきたら、小型の自動車などに乗ってみましょう。
段階を踏むことで、少しずつ揺れやスピードに慣れていき、乗り物への苦手意識が少し弱められると思います。

②平衡感覚を鍛える

乗り物酔いには脳だけではなく、耳や目、鼻、足の筋肉・関節、自律神経といった様々な体の器官がかかわっています。
適度な運動で調子を整え、平衡感覚を養うことも乗り物酔いの予防につながります。
頭を振る訓練
50m先の動かないものを見つめながら、頭を1.左右に30度ずつ振る、2.上下30度ずつ振る、3.左右に30度ずつ傾けるを各10往復、1日2回行う。
目を動かす訓練
50m先にある、1.左右に30㎝離れた2つの点を頭を動かさずに交互に見つめる、2.上下に30㎝離れた2つの点を頭を動かさずに交互に見つめるを各10往復、1日2回行う。
体勢を変える訓練
1.仰向けに寝ている状態から起き上がる、2.左右に寝返りを打つ、3.椅子に座った状態から立ちあがるを各10往復、1日2回行う。
足動かす運動
1.「足を閉じて立つ」と「片方の足のつま先にもう片方の足のかかとをつけて立つ」を目を開いた状態と閉じた状態で各5~10分、1日2回行う。2.足踏みを目の開いた状態と閉じた状態で各50~100歩、1日行う。
四股を踏む運動
1.背筋を伸ばして足を開き、股を割って膝に手をそろえる、2.足を上げるときはできるだけ高くゆっくりと上げる、③足を下ろし、反対側の足を同じように上げるを朝10回、夜40回行う。
こういった運動はバランス感覚を鍛えるのにおすすめの方法です。
また、寝返りを繰り返すことによって平衡感覚が鍛えられ、三半規管の機能強化につながります。

③滑り台やブランコで遊ぶ

子どもの場合は、体に動きを与える遊具でトレーニングするのもよいでしょう。
滑り台やブランコは、遊びの一環として揺れやスピードに慣れるのに有効な遊びです。遊びながら乗り物酔いのトレーニングができるので、遊びに取り入れてみましょう。

乗り物酔い予防のコツを押さえ、楽しくお出かけをしましょう。

新しい薬を誕生させるために行われる「治験」についての説明は公的機関の情報もご確認ください。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu.html

執筆者

治験コンシェル
治験バンクコラムの企画・執筆・編集をしています。マーケティング、SEO対策、デザインに強みを持ったメンバーが、最新情報やノウハウをわかりやすくお届けします。