親知らずとは
親知らずとは、一番手前の歯から数えて8番目の歯、最も後ろに位置する大臼歯のことです。第三大臼歯または智歯と呼ばれています。通常、永久歯は15歳頃までには生えそろいますが、親知らずは、生える時期が10代後半から20代前半です。一部例外を除き、抜歯をするケースがほとんどです。
親知らずは、上下左右1本ずつで計4本になりますが、すべての人に生えているという訳ではなく、4本とも全部ある人、1~3本ある人、生まれつき親知らずが先天的に存在しない人もいます。
また、自分では生えていないと思っても、歯茎の中に埋まっているケースもあります。
親知らずによる病気
虫歯・歯周病
親知らずは一番奥に生えている歯なので歯ブラシも届きにくく、磨き残しが発生しやすい歯です。特に斜めに生えていたり、頭半分しか出ていない状態などは不潔になりやすく病気のリスクが高くなります。
更に親知らずの手前の歯まで虫歯や歯周病になってしまうこともあります。
智歯周囲炎
智歯周囲炎とは、智歯(親知らず)周囲の歯茎の腫れ、痛み、出血、膿が出たりすることをいいます。重症の場合は顎から首の方まで炎症が広がってしまいます。
生え方による違い
親知らずには、大きく分けて3つの生え方があります。生え方によって、症状が異なります。簡単に、それぞれの生え方と、よくある症状などをご紹介します。まっすぐに生えた親知らず
親知らずがまっすぐ垂直に生えており、痛みや炎症など何もないという場合は、そのままで問題ありません。他の歯にダメージを与えず、噛み合わせも良い状態であれば、他の歯と同じ機能を果たし、口腔内にトラブルを起こすことは少ないと考えられています。
しかし、噛み合わせに問題があったり、虫歯になってしまっている場合、あるいは長期的に痛みや腫れが引き起こされる可能性が高い場合などは、抜歯をおすすめすることがあります。
また、「痛くないけどむずむずする」「体調が悪くなると鈍痛がある」「周辺の歯茎が痛い」といった違和感を感じる場合は、一度受診されることをおすすめします。
斜めを向いて生えた親知らず
歯の表面の一部が歯茎から見えている親知らずのことを「半埋伏智歯」といいます。この様な歯の一部が露出しているタイプでは、ブラッシングがしづらくなることから、磨き残しが溜まり、虫歯や歯周病になるリスクが高い親知らずと言えます。この様な場合は、早くに親知らずを抜歯しておくことで、むし歯を防ぐことが出来ます。
親知らずの周辺の歯茎や口内の衛生状態が悪くなると、ストレスがかかった時や睡眠不足・体調不良の際に腫れたり痛みが出てくることもあります。
また、親知らずが正常な形で生えてこないと、噛み合わせや歯並びを悪くしてしまうリスクもあるため、歯科医師による適切な対応が必要です。
水平埋伏に生えた親知らず
水平埋伏歯とは、横を向いて歯茎の中で埋まっている親知らずのことをいいます。このタイプは、ほとんどが下顎のケースです。真横に生えているので、抜歯の際は、歯茎の切開や骨削除が必要となり、難易度が高くなります。
むし歯や歯周病を引き起こすリスクはありませんが、「嚢胞」という骨の中に袋状の塊が出来る病変に気を付けなければなりません。嚢胞は顎の骨にある歯根に出来たり、舌や唇にも出来るものもあります。
骨の圧迫したり溶かしたりするトラブルを生み出してしまうため、除去しなくてはいけない場合もあります。
逆向きに生えた親知らず
歯茎の中で逆向きに生えている親知らずのことを「逆性埋没智歯」といいます。口腔内には出てこないため、むし歯や歯周病のリスクを高める可能性は低いですが、骨の中に嚢胞を作ってしまうケースもあります。
もし親知らずが目に見えていない状態で、歯の奥や口内が痛んだ場合は、逆向きに生えている場合を想定し、歯科医院でレントゲンを取りましょう。
親知らずの抜歯
親知らずの抜歯は、その親知らずの生え方により難易度が異なります。まっすぐに生えた親知らずの抜歯
まっすぐに生えた親知らずは、比較的早く処置が終わり、痛みや腫れも少ないことが多いと言えます。通常の歯の抜歯と同じように、局所麻酔をした後に、歯を骨から脱臼させて抜き出します。
その後、患部をガーゼで止血します。傷口が大きい場合は、糸で縫合します。
半埋伏の親知らずの抜歯
斜めに生えた親知らずは、まっすぐに生えている親知らずと同じように抜歯するのは不可能です。歯茎の表面に対して斜めに生えいるので、手前の歯にあたって抜き出すことができません。そのため、歯の一部を削って分割して抜歯します。
水平埋伏の親知らずの抜歯
水平埋伏歯とは、横を向いて歯茎の中で埋まっている歯のことをいい、抜歯の難易度はかなり高くなります。埋まっている親知らずを抜くため、歯茎を切開して埋伏している歯の一部分を露出させます。
それから、歯を小さく分割しながら取り出します。歯の大部分が骨に埋もれている場合は、親知らずを囲んでいる骨の形を整えます。
親知らず抜歯後の症状
症状① 痛み
抜歯術中は麻酔が効いているので、痛みを感じることはほとんどありません。ただ、麻酔が切れてからは痛みを感じてしまうので、痛み止めを服用し、痛みを抑えましょう。
もし、抜歯後4日目ぐらいを過ぎても強い痛みが続いている時は、抜歯した穴がドライソケットになっている可能性がありますので、ドライソケットになっていないか歯科医院で診察をしてもらいしょう。
症状② 腫れ
抜歯当日より翌日、翌日より3日目をピークに腫れ、その後徐々に腫れは引いていきます。個人差や親知らずの状態により異なりますが、通常は徐々に腫れが引き1週間~10日後には消失します。一般に骨の削除量が多いと腫れやすく、切開した範囲が広い場合も腫れやすくなります。
症状③ ドライソケット
ドライソケットとは、親知らずを抜歯後に起こり、抜歯した穴が血液で覆われず骨が直接口の中にむき出しになっている状態のことです。下の歯を抜歯した場合に起きやすいです。ドライソケットになると、常に脈打つようにズキンズキンとするような痛みがある状態になり、かなり強い痛みが出ることも多く見られます。
親知らず抜歯後の注意点
抜歯後の口腔内は非常にデリケートですので、以下の点にご注意下さい。・ガーゼは30分~1時間程噛んでいてください。
・血が止まりにくくなるため、うがいは歯ブラシの時に行う程度にし、必要以上に行わないでください。
・抜歯後1~2時間は麻酔が効いているため、麻酔が切れる前の食事は控えましょう。
・硬いものや熱いもの、辛い食べ物など刺激の強いものは控えてください。
・飲酒・喫煙・運動は48時間さけて下さい。
・抜歯当日の入浴は避け、シャワー程度にしてください。
・当日は歯磨きの際に歯磨き粉を使用せず、歯ブラシは優しく当てましょう。
・抜いた所を指や舌で触ると出血したり、細菌に感染する恐れがあるので、触らないようにしましょう。
・痛み止めや感染予防のため抗生物質が出ることもあるので、処方された薬はきちんと飲みきって下さい。
新しい薬を誕生させるために行われる「治験」についての説明は公的機関の情報もご確認ください。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu.html