- 豆知識
2022/02/15
下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)について
下肢静脈瘤とは?
ふくらはぎや太もも、膝の後ろ側の血管がボコボコ浮き出ている。
太ももや膝の裏などに、赤紫色の、クモの巣状の血管が無数にあって見た目が悪い。
足が疲れやすく、むくむ。
脚がかゆかったり痛みを感じたりする。
歩いているときや寝ているとき、こむら返りがよく起こる。
下肢静脈瘤は、男女を問わず起こる病気ですが、女性により多く見られます(男性の約2~3倍)。女性の場合、妊娠によって腹圧が高くなり、下肢からの血液の流れがスムーズにいかず、脚の静脈に血液が溜まるからだと考えられます。
このほか発生しやすい人の特徴としては、長時間の立ち仕事(美容師、調理師、販売員など)に従事している、高齢で筋肉が落ちている、肥満・高血圧・糖尿病がある、家族に静脈瘤の患者がいる、などがあげられます。
また年齢とともに進行しやすくなることがわかっています。
下肢静脈瘤は、強い痛みなどがほとんどないため、気にはなっても放っておく人が多いようです。
その原因は?
心臓から、体全体に血液を送る血管を動脈と呼び、全身から心臓に戻ってくる血管を静脈と呼びます。下肢静脈瘤は、脚から心臓へ押し戻す血液の流れが逆流して静脈内に戻り、血液が脚の静脈内に溜まってしまうことが原因です。
通常、歩くことでふくらはぎの筋肉が収縮して血液を押し上げ、心臓へと血液を返しています。この筋肉のポンプ機能が落ちたり、血液の逆流を防ぐ静脈弁が弱ったりして逆流を防ぎ切れなくなることで血液が皮下の静脈内にたまり、血管が伸びたり、膨らんだり蛇行して数珠状につながった状態の静脈瘤になります。
見た目にコブがなくても、かゆみや痛みを感じたり、こむら返りを起こしたり、脚がむくんだりします。
下肢の静脈には、筋肉よりも内側を走っている「深部静脈」と、皮フと筋肉の間を走る「表在静脈」があり、コブができるのは皮フに近い「表在静脈」です。
治療法は?予防法は?
主な治療法は5つあります。
1)圧迫療法:弾性ストッキングや弾性包帯を着用して脚を圧迫し、静脈内の血液を心臓に戻りやすくします。
2)硬化療法:静脈瘤の中に直接薬を投与して静脈の内膜に炎症を起こさせ、皮膚の上から圧迫して患部の静脈を閉塞させて静脈瘤を消失させる方法です。外来での対応も可能です。
3)ストリッピング手術:足の付け根や膝裏などの皮膚を小さく切開し、弁不全を起こしている静脈を特殊な器具(ストリッパーワイヤー)で抜き出し、残った静脈瘤を小切開創から摘出します。
4)レーザー治療:静脈の中に細い光ファイバーを通し、血管内に照射するレーザーの熱によって静脈をふさぎます。近年主流となっている治療法です。
5)CAC治療(最新治療):日本で保険適応できるのは「ベナシール」のみです。いわゆる瞬間接着剤を静脈内に注入して血管を閉塞する方法です。
予防方法と、治療後の注意点
適度な運動を取り入れ、栄養バランスを心がけて、静脈や静脈弁に負担をかけないようにしましょう。
血行を促し、脚の筋肉の収縮力を高めるための適度な運動をする。また塩分や脂肪の多い食事を控えてバランスの良い食生活を心がけるなどで血液の流れを改善し、静脈の負担を軽くします。
血管に負担のかかる長時間の立ち仕事や座り仕事の時は、休み時間に軽く体を動かしたり、脚を上げて休んだり、足首の屈伸を繰り返すなどして、同じ姿勢を取り続けないようにします。また弾性ストッキングを着用したり脚を高くして寝るなどの日常的な取り組みが、予防に効果的です。
新しい薬を誕生させるために行われる「治験」についての説明は公的機関の情報もご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu.html