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コラム

  • 豆知識

2021/03/17

インフルエンザワクチンと治験

インフルエンザワクチンの働きは?

インフルエンザの発症は、インフルエンザウイルスが口や鼻あるいは眼の粘膜から体の中に入ってくることから始まります。体の中に入ったウイルスは次に細胞に侵入して増殖します。

ウイルスが増えると、数日の潜伏期間(2日程度)の後、発熱やのどの痛みなど、インフルエンザの症状が現れます。これを感染(発症)といいますが、残念ながら、現在のワクチンには感染を完全に抑える働きはありません(一定程度の抑止効果は認められています)。

発症後、多くの人は1週間程度で回復します。ただ、中には肺炎や脳症等の重い合併症が現れ、入院治療を必要とする人や死亡する人も出てきます。これをインフルエンザの「重症化」といい、特に基礎疾患のある人や高齢者では重症化する可能性が高いと考えられています。
インフルエンザワクチンの最も大きな働きは、この「重症化」を予防することです。

国内の研究によれば、高齢者福祉施設に入所している65歳以上の人については、34~55%の発症を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったとされています。

不活化インフルエンザワクチンの登場

インフルエンザワクチン開発のきっかけは1918年のスペイン風邪によるパンデミックでした。それは人類史上最悪の流行で、全世界で4千万人以上が死亡したといわれています。
1919年以降、世界各国の研究者たちが研究を進め、インフルエンザウイルスを弱毒化したものを原材料とする生ワクチンが開発され、ついで不活化ワクチンが開発されました。

不活化ワクチン登場

生ワクチンの開発に続いて、不活化インフルエンザワクチンの研究が始まった理由は、生ワクチンの多くが、免疫反応がないか、あるいは強すぎたためです。
不活化ワクチンは、細菌やウイルスを殺して(不活化)毒性を無くし、免疫(抵抗力)をつくるのに必要な成分だけを取り出したものです。
この製法なら、体内で細菌やウイルスが増殖することはありません。そのため免疫不全の人でも接種可能であり、副反応を起こすこともまれです。
ただし、1回の接種では十分な免疫を得ることができないため、ワクチンによっては複数回の接種が必要になることもあります。

インフルエンザワクチンの有効性

現在、世界中で数多くの種類のインフルエンザワクチンが使用されていますが、有効性と安全性を兼ね備えた決定的なワクチンは一つもないといわれています。たとえば、はしか、おたふく風邪、風疹のワクチンの有効性(97%)には、全く及びません。

なぜ他のワクチンのように、期待された効果が得られないのでしょうか。それはインフルエンザウイルスの特殊性に原因があります。
インフルエンザが毎年流行する最大の要因は、インフルエンザウイルスの抗原性が毎年少しずつ変異し続けていることです。
インフルエンザワクチンは、次のシーズンに“流行すると予測される”抗原性を持ったワクチンを事前に用意します。そのため、予測が外れた年にはワクチンの効果は期待できません。抗原の変異に対応するため、私たちは毎年ワクチンを受けなければならず、時間的にも経済的にも大きな負担になっています。

研究と治験は続くよ、どこまでも

インフルエンザは、ウイルスが気道粘膜に感染し、それが発症に繋がる局所感染症です。もともと、局所感染症へのワクチンの効果は低いとされており、インフルエンザワクチンは、まさにその一つです。
現在、こうした問題を“課題”ととらえ、世界中の研究者が解決のためにさまざまなチャレンジをしています。
一例をあげれば、インフルエンザウイルスが気道粘膜に感染する性質を利用して、気道に免疫(抗体)を与えるために、鼻からの吸入でワクチンを接種する試みがなされています。そのほかには皮膚表面への接種、経口タイプの接種などが研究されています。近い将来、インフルエンザの感染を防ぐ効力のあるワクチンがきっと開発されることでしょう。

治験モニターの意義

製薬会社や研究者が試行錯誤を繰り返して創り上げた、新しいワクチンやくすりを治療に使えるようにするには、厚生労働省の承認を受けることが必要です。
それには、実際に、健康な人や患者さんの協力を得て、「くすり候補」の有効性と安全性を確かめなくてはいけません。これが治験です。

人での治験(臨床試験)の前には、動物実験で効果や安全性を十二分に確かめてあります。全く副作用がないと言い切ることはできませんが、治験は「医薬品の臨床試験の実施の基準」(GCP)といわれる厳しい国のルールに従い、安全の確保と人権保護を最優先して実施しています。

治験は、新しいくすりによる治療をいち早く受けることができて、病気に苦しむ人たちの役に立つ、また医療の発展や治療の進歩に貢献することができる…とても意義のあるボランティアだと言えます。
治験モニターには、交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が支払われています。

参考「地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 理事長奥野良信氏論文<インフルエンザワクチン開発の歴史> / 厚生労働省ホームページ」