- 豆知識
2022/02/15
アニサキス症(寄生虫による食中毒)について
アニサキス症とは
刺身を食べた後、数時間して激しい腹痛、嘔吐、吐き気にみまわれた。
魚介の生食後、腹痛、嘔吐、吐き気などの症状があり、便が出なくなった。
ジンマシンが出たあと、呼吸不全になった(アナフィラキシーショック)。
海産魚介類の生食が原因でおこる食中毒(寄生虫症)の中でも、日本で最も多発するのがアニサキス症です。
アニサキスは寄生虫(線虫)の一種で、その幼虫(アニサキス幼虫)は長さ2~3cm、幅は0.5~1mmくらい。太めの、白い糸のように見えます。
主にサバ、イカ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、アジなどの魚介類の内臓に寄生しますが、寄生している魚介類が死んで時間が経つと、内臓から筋肉へ移動することが知られています。
アニサキス症は、刺身や寿司など海産魚介類の生食を好んで食べる食習慣と強く関連しており、諸外国に比べて圧倒的多数の症例がわが国で発生しています。
原因は?
アニサキス症(食中毒)は、アニサキス幼虫が寄生している生鮮魚介類を生(または不十分な冷凍や加熱不足のものを含む)で食べることで、 アニサキス幼虫が胃壁や腸壁に食い込み、症状(食中毒アニサキス症)を引き起こします。
人への感染源となる魚介類は、わが国の近海で漁獲されるものでも160種を超えており、中でもサバ(マサバおよびゴマサバの総称、加工品としての「しめ鯖」を含む)が最も重要な感染源と考えられます。
アニサキス症の種類
胃アニサキス症
魚介類を生食後数時間して起こる激しい上部腹痛、吐き気、嘔吐が特徴で、たいていの人がこの症状になります。問診と症例から判断して、胃の内視鏡検査でアニサキスを検索し摘出します。虫体1匹で発症することが多く、摘出するとピタッと症状は治まります。
まれに、健康診断などの内視鏡で胃粘膜に入り込んだ幼虫が見つかる無症状の例もあります(緩和型胃アニサキス症)。
腸アニサキス症
幼虫が腸に食い込む腸アニサキス症では、腹痛、吐き気、嘔吐の症状のほか、時には腸閉塞や腸穿孔を併発することがあります。
消化管アニサキス症
まれにですが、幼虫が消化管を突き抜けて腹腔内に入り込んだあと大網膜、腸間膜、腸壁皮下などに移行して肉芽腫を形成することがあります。アニサキスの寄生した部位に応じた症状が現れます。
アニサキスアレルギー
魚介類の生食後にジンマシンを主症状とするアレルギー反応が出ます。さらに血圧降下や呼吸不全、意識消失などのアナフィラキシー症状が起こることも。アニサキスアレルギーは、アニサキスの成分に反応しているため、刺身の中にアニサキスがいるかいないか、アニサキスが生きているか死んでいるかは関係ありません。アニサキス成分が入っているかいないかです。
加熱や冷凍するとアレルギー性は多少弱まるようですが、アニサキス成分への反応には個人差があるため必ずしも安全とは言えません。アニサキスアレルギーの人はイカや青魚など寄生率の高い魚介を食べるときには注意が必要です。
治療法は?予防法は?
治療は
胃アニサキス症は、胃カメラ検査を行って胃粘膜に穿入するアニサキスを見つけ、これを鉗子で摘出します。腸アニサキス症など、すぐに内視鏡検査が行えない場合には、ステロイド薬、抗ヒスタミン薬などを処方します。場合によっては外科的処置が施されます。現在のところアニサキス幼虫に対する効果的な駆虫薬は開発されていません。
予防がいちばん
アニサキス症に感染しないための方法は、海産魚介類の生食をさけること、加熱すること(60℃で1分以上)です。
または、冷凍すると(−20℃で24時間以上)アニサキス幼虫は感染性を失うため、一度冷凍し、解凍した後の生食なら感染予防に有効です。
加熱や冷凍以外の方法として、漁獲後の新鮮なうちに魚介類の内臓を取り除くと感染予防になります。時間が経つと内臓に寄生する幼虫が筋肉へ移行するからです。なお、わさびや酢がアニサキス症の予防に有効ではないかと言われてきましたが、料理で使う程度の量や濃度、処理の時間ではアニサキス幼虫は死にません。そのため、しめ鯖など酢漬けの食品にも注意が必要です。
新しい薬を誕生させるために行われる「治験」についての説明は公的機関の情報もご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu.html